2014年9月18日木曜日

大垣きゅんを訪ねて (OLYMPUS C-160)

ローカル萌えキャラも追い切れないほど増えた昨今だけど、岐阜県大垣市も、結構大きく仕掛けている。
大垣きゅん物語」、前々から現地チェックしたかったが、大垣というのは大阪からはちょっと、近くて遠いというような場所。直線距離の割に時間距離が遠くて、バイクだと疲れる、鉄道でも乗り換え多くて大変。
何かのついでに、と思ってたら、名古屋のほうにいく機会があったので、その用事を一泊二日にして二日目を使って行ってみた。



周辺の鉄道線は、多くが大垣始発。
東海道本線も、大垣が切れ目になって、西にも東にも始発が出る。さらに支線があって、美濃赤坂にも向かう。
養老鉄道というローカル私鉄も、大垣を境に北の揖斐行きと南の桑名行きがそれぞれ始発。
さらに本巣市の樽見へ向かう樽見鉄道線も出ていて、一大ターミナルになっている。
いずれもローカル度高くて本数が少ないのはいかんともしがたいが。

駅南口すぐに観光案内所があるので、観光マップをもらう。
そこに、大垣きゅん物語ファン向けの観光マップもつくられていたのを発見して、そっちも。
実のところ、大垣きゅん物語を見に来たといいつつ事前情報は全然入れてないので、ウェブラジオをやってることもここで知った。置鮎龍太郎と立花慎之介かいな。豪華な。



さて、大垣きゅんの大垣小旅行マップに従うと、まずは高屋稲荷神社へ。
特に変哲もない小さな神社のようだが……と思ったら、この写真の左手に、


手水を兼ねてるのだろうか、湧き水がこんな形に作られている。格好いいな……

水都といえば大阪市だと言いたいところだが、大垣もまた水の都を名乗る。
水門川という大垣城の堀川が町を流れ、各所に湧き水もある。飲めるくらいにきれい。


水門川沿いにきてみれば、川沿いはきれいに整備されている。
そして歌碑があるから何かと思えば、芭蕉の句だ。ん、なんで芭蕉? と、この時点で私はぜんぜん知らない。
この碑は福島の須賀川で詠んだ「世の人の 見付けぬ花や 軒の栗」。なんで福島?

水門川が北から東へ折れるところに、「自噴水」の案内がある。


湧水は井戸もあれば自噴もあるようだ。さっきの高屋稲荷神社のは井戸で、こっちの栗屋公園というところのは自噴。
昭和35年からある公園だけど、平成16年に改装されて今の姿に。
改装以後は水質検査をやるようになって、ちゃんと飲用レベルの水質だと定期的に確認されている。検査書も掲示されている。


栗屋公園に隣接する稲荷神社。大垣の神社の拝殿は、わりとストイックな造りな印象。

この稲荷神社近くが、かつての大垣城の東総門になっていたそうだ。
そんな大垣城の外堀を回るように、西へ。


すぐ川の南側、かつて城内だったところにある貴船神社が、なにやら縁結びの神様とされている。
水の神様じゃなかったっけ……と思ったら縁結び信仰もあるようだ。

神社前の通りが水門川を渡るところで、なにやら派手なオブジェが建築されている。
七夕祭りをモチーフにした「虹のかけ橋」なるもので、両側から手を触れてメロディが流れ出したらうまくいく、となってるらしい。メロディは定時になるらしいから、やって見る場合はいつ鳴るのか事前に調べてタイミングを合わせよう。


水門川沿いは、実に趣味よく整備されている。
実は水門川の水は、結構濁っていて水底が見えるような綺麗さではないのだけど、護岸やらのセンスがいいから歩いて気持ち良い。
この日歩いた限りでは、大垣の町って、川沿いも公園も商店街も、そして商店街を一筋裏手に入ったら出てくる昭和の残骸みたいな旧商店も、どこを見ても何か良く感じられる。なんかそんな、町づくりの技術みたいなもんがあるんだろうかなあ。


大垣市の保健センターに、かつては大垣藩校があったらしく、その敬教堂跡と、雷除けに植えたトネリコがあって文化財に指定されている。


水門川が南に折れる、その北西角にあるのが八幡神社。
大垣きゅん物語のドラマCDは、ここも舞台のひとつだそう。

大垣藩は戸田氏という大名が治めていたが、その初代藩主氏鉄公がこの神社を再建整備し、それから城下の18郷が山車(車編に山、という字を使っている)を曳く祭りが始まった。


境内は、摂社末社が散在していたりはせず、広々している。曳山が入るからかな。


ここにも湧水があって、老夫婦が車でやってきてポリタンクに水を汲んでいた。
ウィスキーの水割りなんか飲む習慣でもあれば、ちっとペットボトルにでも汲んでいきたかったところだが、私は水割りはやんなくって。

川沿いにぶらぶらと南下。
このあたりは特に何も……と思ったら、藩主戸田氏の菩提寺らしいお寺があったがうっかりスルーしてしまった。
大垣きゅん物語マップでは、市役所ロビーに地場産業展示があるというので寄ってみたけれど、今は何かスポーツ選手が活躍しただったか、そんな展示で。

そして「四季の公園」なるところにくる。


またここの景色もいい。どこからこう良いセンスがでるのだろ。
ちょっと植樹が多くて、落ち葉とか鳥の糞とかも多くて、綺麗に掃除が行き届いてるわけではなかったりもするんだけど、それはそれで趣味を損ねてる感じでもない。
尾道みたいに地形がすでにどうやっても美しいところでもなく、歴史的な町並みをそのまま保存してるところでもなく、大垣の場合は、人工物なんだけどそのセンスがただ良い。そんな町なら他にもありそうなもんだけど、案外に思いつかない。

人気マンガの舞台でもある、とだけ大垣きゅん物語マップにはあるが、検索した感じは「聲の形」というやつだろうか。
偶然、ここにくる前日に友人からそういうマンガがあると聞いたところだったが、私は内容までは知らないな。


ハーピアンなる楽器が、公園の水門川を渡る小さな橋についている。
急に言われても弾ける曲がないけれど。
鍵盤を押すと、奥に立っている振動棒が叩かれて音が出る仕組み。ピアノとかハープみたいな音じゃなくて、NHKのど自慢の鐘みたいな音。


奥の細道むすびの地記念館。
ここにきてやっと、なぜ大垣がこんなに松尾芭蕉押しなのかと知ることになるが、まさにここがかつての美濃路、「おくのほそ道」の結びの地だったとは。
芭蕉は帰ってきて、そのまま伊勢神宮の遷宮を見にすぐ出発するそうだけど、「蛤の ふたみにわかれ 行く秋ぞ」と詠んだ。

ここに大垣きゅんがやっと登場。まだそこらじゅうに居るキャラではないらしい。
グッズ販売なんかもここでやってるので、活動拠点は定まっている。

記念館の内容は、3D映像でおくのほそ道の旅路を追う映像のあと、おくのほそ道についての解説展示と、それから地元大垣の偉人についての解説展示。
大垣藩ってあまり知識がなかったけれど、幕末には薩長に続く維新功労藩だったそうで。


またも湧水。

ここには水質検査の書類が貼ってあったので、私もなりたてとはいえ環境計量士としてまじまじ眺めたりしたものの、まったくきれいな水。直接飲用する前提できっちり多項目に渡って検査してあって安心。どの項目も余裕を持って基準をパスしている。
水温は14度くらいで、冷蔵庫よりちょっとぬるめ。軟水で飲みやすい。

大垣の特産品は枡だそう。国内シェア8割を占めるとか。
私もなりたてとはいえ環境計量士として(このフレーズはただの自慢である)、古来の計量器たる枡には馴染みが深い……なんてことはまったくないが、ちょっと面白いのでひとつ購入。


袋から出したら、ヒノキの香りがいい。
大垣の渡辺酒造醸、芭蕉水門川純米を購入。300mLで500円くらいだからそんな高くない。飲んでみると辛口でもなく、さほどフルーティとか芳醇とかでもなく、すごく飲みやすい。


近くはかつては船着場だったそうで、船町川湊といわれて、国指定名勝「おくのほそ道の風景地」とされている。
黒塗りの灯台も格好がいい。

ここからは、旧美濃路を少しあるいて東のほうへ。


さすが旧街道沿い、こんな羊羹屋が残っている。


そして街道沿いだけに、美濃路大垣宿本陣跡も。
かつては写真左手に旅籠が、そして右手にはもっと大きく本陣の建物が広がっていたのだが、現在はこれだけ。
明治天皇がお越しになったときの行在所跡もある。
中はちょっとした展示施設。案内の人がお休みだったらしく、地元の奥様が謡曲やりながら留守番をしていた。

それから大通りを北に戻っていくと、大垣市守屋多々志美術館というところがあって入ってみた。
守屋多々志、というと私は知らないが、歴史画で有名な日本画家であるそう。
中には、おくのほそ道のシーンを描いた作品が多数展示されていた。難解というかよくわからない印象派とか現代美術と違って、テーマが明確だと私みたいな素人にも楽しみやすい。

そして大垣城へ。


それほど巨大天守を擁するような白ではなくて、結構こぢんまりしている。
1500年代に入ってからできた、わりと新しい城ではあるけれど、美濃路が東海道と中山道を結ぶ交通の要衝でもある。関が原の合戦では、石田三成が西軍本陣としたくらい。

空襲で焼かれるまでは現存天守として国宝にも指定されていたが、今のは1959年再建。


天守を写真に納めるのにいいアングルを取りづらい城だなと思ったが、そのほうが防御的かもしれないな。
天守の中は、戸田氏と関が原合戦を中心とした展示。天守からの眺めは、天守最上階が天井低くて、また窓も小さめで、展望台的な扱いはあまり見込んでいないようだ。オリジナル再現重点。


城の西には郷土資料館。
戸田氏所有の文物とか地元民芸品、あとは書の展示があったけど私は書はまったくわからない。
特別展示で、大垣の町の古い写真を展示していた。

城の東の大通りが商店街で、ほとんどすぐに城があるんだけど、その僅かな隙間の裏路地が、昭和で時間が止まった素敵エリア。
多分やってないけどもしかして、という喫茶店、あいにくやってなさそうだけど看板だけ残るビリヤード場。猿岩石のポスターを貼った理髪店はやってそうだった。


水分補給に地元のお茶を購入してみた。
ペットボトルとしてはけっこう苦味を出してるさっぱり味。抽出温度高いのかな。


商店街の様子。
駅前の広い通りの商店街、これがまさに美濃路だそうだが、かなり多数の街路樹が植えられている。今のひとつ前の市長さんが、かなり緑多めに町づくりする人だったそう。

この商店街もなかなか、かなり古い店も残ったままで味わい深い。
しかし残念ながらシャッターがしまった店もちらほら、開いているようでも自治体の就労支援でやってる店などもあって、なんとかシャッター街化に抗っている雰囲気。
旅人にはいい街に見えるのだが、商売するのは辛くなってきているか。例によって駅前からイオンタウン行きのバスが出てたり、その手のモールも大型工場跡地とかが利用されて多数作られちゃって、今では過当競争に陥っているとか。さらに駅前になんか作ってるけど。


ここらへんの名物は水まんじゅうだそう。
商店街にも江戸時代から続く店がいくつかあって、せっかくだから入ってみた。煎茶とセットで360円とリーズナブルで嬉しい。
つるんと口に入れると、すぐほろほろと溶けるようにほぐれていく。皮は葛なのかな。緑の方は、葡萄かなにかの甘酸っぱい果実。もうひとつはこしあん。

店の看板娘(70歳くらい)としばらく話しながら頂いて、地元の人としては商店街の植樹はちょっとやりすぎ、秋は落ち葉の掃除が大変すぎる、通りの向かいの店も全然見えないと不評で、市長が代わって木の数が減らされたとかそんな裏話。
旅人にはセンスいい町でも、住むとまた違うところもあるか。

で、「夕方4時ごろに、大阪まで直通の汽車が出てるよ」と教えてもらい、時計を見ると四時前。
それならそれ乗ったら楽だなあということでお暇して駅へ。
そして駅で時刻表を見ると、大阪まで直行の特急ひだ、出るのは4時じゃなくて6時だった。ま、そんなこともあるさ。

しかし大垣、いいとこだったな。また来よう。



今日使ったオリンパス CAMEDIA C-160だが、多分日本国内向けにはほとんど出荷されていない機種。
C-120とかもそうだったと思うけど、主にアメリカあたりに向けた、日本のローエンドよりさらに格下のクラス。
つまり、「日本人はいくらなんでもここまで低機能だと我慢できない」という機種なわけで、何かがとんでもなくダメだと思っていい機種なのだが。
ちなみに私の手にした個体は、どういうわけかトヨタの関連企業のロゴが入っていた。多分何かの社内的な記念で作って配られたんじゃないかな。

もうxDカードに切り替わっているし、ローエンドで300万画というスペックから見て、多分2004年くらいの製品か。200万画素モデルのC-150は2003年に出てたらしいから、同時かも。
レンズバリアのデザインは、X-250よりもC-300ZOOMに似てる。当時多かったスライドバリア系の中でも、わりと薄型に仕上げられている。

バッテリーは単三2本でCR-V3対応。
RCR-V3でも違和感なく動作したし、バッテリーライフはかなり長そう。充電して数ヶ月放置したのを突っ込んで、92枚撮影してまだ満タン表示のまま。

レンズは33mm相当のF2.8でAF。当時としてはかなり広角。
画角から見てセンサーは1/2.5型で、多分X-250とかμ-10で使ってたものの使い回しかな。だったらパナソニックセンサーで、ソニーCCD不良には巻き込まれていない。
もちろんフルオートのみの簡単カメラで、ISO感度の手動設定もない。シーンモードはあった。
モニターは小さいが、意外に発色はいい感じ。光学ファインダーももちろんある。

xDカードは、どうやら無印のxDカードのみ対応のよう。
Type Mの2GBはダメだった。そうなるとカードの入手が難しいな……


さて、オリンパスのスライドレンズバリアスイッチのカメラには、C-2という名機がある。
ローエンドモデルなのに、手軽な単三バッテリー、小さめ・軽めのボディ、単焦点に割り切ったおかげでレンズの繰り出しがなく動作軽快、画質もそこそこ。
スペックと大きさを見ると、このC-160も、xDカード世代のC-2となってくれそうな機種。

ところが、スイッチ入れた瞬間に、起動するまで6秒くらいかかるのろくさいカメラだとわかっちゃう。
沈胴レンズの繰り出しがない単焦点機は、起動の早さなどを期待しちゃうものだというのに。
そしてシャッターを切れば、撮影間隔が10秒以上あるような激烈な遅さ。
高級機じゃないんだから連写バッファーがないのは仕方ないにしても、この遅さはひどい。メモリーカードのアクセスも、画像処理のプロセッサーも激遅っぽい。

画質も、正直良いとは言えないな、という印象。
どうもパナの1/2.5型300万画素センサーって、使われるのがローエンドばかりだったせいもあるにしても、なんかあんまり写りが冴えない。
レンズも、単焦点だけあって、看板をアップに写しても縁がほとんど歪まないような良さはあるんだけど、どうにも解像感がない。

ただ、本当にシャッター押すだけでそれなりに撮れちゃう。
露出補正なんて一度もやらなかったけど、どんなシーンでも割りといい感じの露出に収めてくれるAE。オリンパスのローエンド機ってこういうの上手いね。

ISOはオートのみ、ストロボ禁止の室内で1/4.5秒・F2.8・ISO80なんて露出だったから、ほとんど増感しない。
ただ、1/4.5秒とか1/11.5秒とか、そんなカットが不思議に手ブレせずに写っている。なんなんだろうこれ。

絞りはF2.8と、F6.0がある。なんとなくF6.0のほうがシャープに見えるから、NDフィルターじゃなくて絞り板はちゃんと入れるのかも。
撮影中に、たまに小さなモーター音がしているのを感じるが、絞りの入れ替えしてたのかな。それにしては音が長いけど、他にモーター音の心当りがない。


同じくらいの時代のローエンドクラスで、安物ゆえの単焦点レンズがかえって高画質のメリットに化けている機種は時々ある。
FinePix A202なんかは、何もかも超割り切った結果、機敏で使いやすくそこそこ写って誰がやっても失敗しなくて電池もすごくよく持つ、デジタル写ルンですが実現されていた。
サイバーショットP32は、やはり高速だし画質もなかなかだった。
EXILIMなんて、そういうカメラに割り切ったからあのサイズができた。
そういう「上手い安物」というようなカメラを、オリンパスはC-2で成功させていたのに、C-160は動作の遅さですべて台無しになってしまったなあ。