2011年3月9日水曜日

京都嵐山

ふらっと嵐山に出かけた。




大阪から阪急電車に乗って、桂駅で乗り換えて嵐山線へ。
嵐山駅は、観光需要を見込んで6面5線の広大なホームを作ったら、それほどでもなかったので3面2線に縮小されたという恥ずかしい経緯を持つ。
使わなくなった3面は植樹してあって、なんかシュールな駅の風景。

微妙に人の流れから外れて南西へ。多くの人は北西へいって渡月橋に直行するようだけれど。

府道29号にそって歩いて行くと、法輪寺という寺がある。
真言宗五智教団の京都本山で、713年に行基が創建した。関西で寺を歩けば行基が現れる。
ここは嵐山虚空蔵山町という妙にかっこいい地名になっているが、それもそのはずでここの本尊が虚空蔵菩薩。

寺より神社に萌える私が寺に何の用かといえば、ここの鎮守社として電電宮社というオヤシロがある。
そここそがお目当て。

寺へと登っていく階段の入口に、いきなりエジソンとヘルツのプレートと「電電塔」というものがある。
もともと電電宮というのは電電明神という、電電陰陽融合光源の徳を祖とするという神様を祭ってる……ってなんのことだかわからんが、雷の神様であるということらしい神様を祀る神社であった。
で、それを神道らしく拡大解釈して、電気・電波の神様ということにされて、昭和31年に時の近畿電波管理局長・平林金之助氏の呼びかけで、44年に再興されたのが電電宮。(それまでは薩長に燃やされてほったらかし)
そういうわけで、電気代表のエジソン、電波代表のヘルツの肖像をプレートにしてある。


寺への階段を登って行くと、途中で早速左手に電電宮がある。
電電宮護持会という組織の芳名録がかかげられていて、パナソニック株式会社が筆頭っぽい位置にある。さすが。
関西の有名電機メーカーおよび通信機器メーカー、放送局などが名を連ね、日本放送、関西電力、毎日放送、朝日放送、住友商事、DXアンテナ、東京電力、ソフトバンクテレコム、KDDI、ホシデン、マスプロ電工、三菱電機システムサービス、ケイオプティコム、ラジオ関西、デンソーなどなど。

まあ、うちの会社は名前がなかったけれど、一応電機メーカーで製品開発してお金をもらってる身として参拝。


もう少し上がって法輪寺へ。
上がってみると、空が高い感じの気持ちの良い境内。
多宝塔はなかなか立派なのがあるけど、山の斜面に沿うように建っていて、圧迫感をもたせない。

多宝塔

うるしの碑、というものがある。
文徳天皇の第一皇子がこの寺に参詣されて、虚空蔵菩薩から漆の製法と漆塗りの技法を伝授され、それを日本じゅうに広めたことから、うるしに縁が深い寺という話。



法輪寺を出て北へいくと、すぐに桂川と渡月橋。
南側の中ノ島をひとまわりしてから渡月橋を渡る。桂川の景色良し。



例によって観光地然としたとこは苦手ながらも、桂川を渡るともう見事なまでに観光地。
京焼の焼き物でもあれば、と思うけど、ちょっと土産物屋丸出しのところしか見当たらなくっていまいち。裏手に入ってみるべきだったかな。
日本酒などあれば、と思ったけど特に無し。

京福電鉄の嵐山駅前までくると、対面には天龍寺という大寺院が。
臨済宗天龍寺派大本山で、世界文化遺産認定。
しかしなんか大きすぎて気後れしたので、門を眺めてパス。


もう少し北上すると、いかにも嵐山な竹林の小径があったのでそちらに折れてみた。
入り際、小倉百人一首文化財団というとこが作ってるらしい、勅撰和歌集の歌碑を配したちょっとした庭園があった。
他にも後拾遺和歌集やら古今和歌集やら、色々あるらしい。

そしていかにもな竹林
いかにもな竹林の間をいくと、野宮神社というところについた。



かつて、伊勢神宮に斎宮にいく内親王が、まず皇居内の初斎院で一年程潔斎し、さらにここで三年間潔斎してから伊勢に向かう、というしきたりがあった。
垂仁天皇の皇女・倭姫命にはじまり、十四世紀後半まではやってたとのこと。

鳥居が珍しい、朱塗りのものでない黒木鳥居。
樹皮をついたままの丸太で組む原始的なスタイル。かつては三年ごとに立て替えてたらしいけど、今はちと木が手に入りづらくなったようで、徳島は剱山の木を防腐加工した長持ちするものを寄進してもらって建っているとのこと。


ここでまた竹林の小径を逆光してもとの通りに戻る。
もう少し北上すると、京都嵐山オルゴール博物館というところがある。

1796年に時計職人アントワーヌ・ファブールに開発された世界最古のオルゴールの展示から、現代のオートマタまで幅広く展示している。
入場料が1000円とちと高いが、アンティークオルゴールの演奏付き解説があるので、珍しい体験はできよう。

最初のオルゴールは、突起をつけたシリンダーが櫛歯を弾いて音を出す、という形だけれど、櫛歯以外にベルやらその他の音を取り入れる。パイプオルガンを自動演奏するようなものまで作られていた。
さらに、シリンダーでなくディスクから演奏を取り出せる形式に進化し、ディスクを換えたら曲が変わるものが生まれて、ジュークボックス的なものが現れる。
が、このあたりで蓄音機が登場して、演奏装置としての立場が入れ替わっていくのだけど、過渡期にはレコードでもオルゴールディスクでも使えるハイブリッドプレイヤーがあったりする。
オルゴールはオートマタとして進化していき、様々なアイディアとアクションをゼンマイ一本から取り出す技術が先鋭化していく。

そういう時代の流れの中の物が、多くは未だに動態で保存されている。
昔の手作り感あふれるオルゴールは、演奏が機械的に正確じゃないというかだいぶリズム感がバラバラだったり。
オートマタの定番ネタとして、「ピエロが夜に手紙を描く姿」というのがあったらしいけど、ペンを動かして手紙を描くうちに眠くなり、ランプの火が消えるとともに頭が落ちて目を閉じ、すぐ目を覚ましてランプに火を付け直す、そこまでやるものの動いてる様子を見られたり。

オルゴールやオートマタなど女の子向けと思わせて、その実、サイバーパンクならぬゼンマイパンクとでもいうような世界があるので、これはもう男子大喜び。



そこから、嵐山電鉄こと京福電鉄嵐山本線で帰路へ。
京福電鉄は元々京都と福井で鉄道をやっていたからこの名前。現在は福井側はえちぜん鉄道に譲渡して、京都にしか鉄道路線は残っていないけれど。

嵐電は路面電車で、細長い車両にかなりの乗車率。
だから揺れが大きくて結構乗り心地は厳しいが、まあ観光路線ならそれも味か。
途中で軽トラが、右後方からきている嵐電に気づかず右折しようとして巻き込みかけ、両者急ブレーキという場面にまで遭遇できた。

端の四条大宮まで乗って、そこから阪急で帰阪。