重巡高雄には、護王神社が分祀された。
地名由来の名前がついた艦なら、その土地にちなんだ神社から分祀されることが多いそうで、高雄の護王神社も、まあ近いってほどでもないけど高雄山と同じ京都にある。
京都御所のすぐ傍らという立地。
別格官幣社というのは日本の国に功績のあった人物を祀る神社なのだけど、ここでは道鏡が天皇に即位しようとしたのを食い止めた和気清麻呂とその姉の広虫姫を祀っている。
ご利益は子育てにあるとされている。
広虫姫は孝謙上皇の女官をしていたが、これが慈悲深い人で、藤原仲麻呂の乱で孤児となった子供を83人も引き取って養子として育てた。それにちなんだご利益。
そして門前を護るのが、狛犬ならぬ狛猪。
道鏡が「宇佐八幡宮の神託によると自分が天皇に即位すると世の中安泰になる」と言い出したとき、はるばる九州まで確認に行った和気清麻呂。
そして、そんな神託はない、と確認して戻ってきた和気清麻呂は、道鏡の(道鏡を即位させるつもりだった称徳天皇の、とも)怒りを買って、名前を別部穢麻呂と変えられた上に大隅に流罪になった。
しかしともかく皇統が途絶えるのを阻止できたし、途中で宇佐八幡宮にお礼参りしていこう、と思ったら、どこからともなく300頭の猪軍団が現れ、宇佐八幡宮までの道のりを守って案内した。
和気清麻呂は足が悪いのに悩んでいたが、なぜかそれも治った。
そんなエピソードがあり、この護王神社や、岡山にある和気神社では狛猪を祀るようになった。
そういうわけで、足が悪いのを癒やすというご利益もある。
もちろん清麻呂公像もある。
京都の中心部からは外れているとはいえ、広めの境内とりっぱな拝殿。
巡洋艦高雄に関係するものとしては、乗員が寄贈した「忠烈」の額が神楽殿に飾られている。
艦これ的には特に運が高いとされていない高雄だけれど、潜水艦Darterにやられて大破したもののすぐ報復を果たして自沈させたし、その後なんとかシンガポールまで沈まずに辿り着いた。霊猪は海上でも加護があるらしい。
その後、イギリスにリムペットマインでいたずらされたものの、不発が多くて軽症で済む、という幸運を発揮して、とうとう終戦まで生き延びた。霊猪の加護だろう。
そんな神社であるからして、社務所にすごい猪コレクションがある。猪猪猪猪……
狛犬が狛猪なら、絵馬が絵猪になるのも当然と言ってよい。
近くにあまり飲食店などが見当たらないが、嬉しい事にコーヒーやお茶を出してくれる休憩所がある。300円とリーズナブル。
で、この休憩所の壁面にもぎっしり猪猪猪猪猪。
かくも猪パラダイスな護王神社。
さりげなく非常に細かく史実や実艦からネタを拾っていることで知られる艦これ、高雄もきっと護王神社の猪ネタをどこかに拾っていることであろう。