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2014年11月29日土曜日

あべの・熊取煉瓦館 (COOLPIX 995)

さて久しぶりの古カメラ徘徊記事。

さすがに最近はもう、「昔使ってみたかったあのカメラ」的な古カメラもほぼ使い尽くしてしまった。
今なお使ってみたいとなると、それこそオリンパスE-20とか、ソニーCybershot DSC-R1とかDSC-F717とか、ニコンCOOLPIX 5700とか、そんなハイエンド系しかなくなってきた。
こういうのは、たまに中古あっても1万円くらいして、さすがに遊びで買えんよなー、と思う。500万画素くらいだぞ……

あったら欲しいという機種も、カシオEX-S100 (なぜか特殊硝材を採用した独自設計レンズ採用の肩に力が入ったEXILIM)とか、オリンパスAZ-1 (DiMAGE Xみたいなオリンパス機。見たことない)とかC-70Z (渋いおっちゃんカメラ)、ソニーDSC-P200 (伝統のあのスタイルの最終モデル、メーカー直販しか販売なくレア)とかUシリーズ (全機種CCD不良で死ぬ。U50とかU60とか特殊系が発見できない)、ニコンCOOLPIX S10 (スイバル最終モデル)、そんくらいかな。
誰か持ってたらください。



で、久しぶりに見つけた使ってみたいモデルが、ニコンのスイバル機がフラッグシップだった時代の最後を飾るモデル、COOLPIX 995だった。
かつてのニコンは、普通のカメラ然としたスタイルのは中級機以下で、フラッグシップはE900系スイバル機だった。どうもキヤノンの方が若者向けのイメージがあっても、大体やること尖ってるのはニコンの方よね。
まあ、もっとも、この頃のニコンデジカメは、ハイエンドはフィルムの一眼レフであって、デジカメは最上位モデルでもハイアマのおもちゃ、みたいな扱いだった気はせんこともないが。

このE995は、いろいろイマイチ扱いされた機種で、あんまり売れなかったとか。そして半年くらいで、ふつうのカメラ型のE5000にハイエンドの座を譲ってしまった。
E995にも後継機としてE4500が出たものの、ハイエンドポジションではなかった。
さらにE2500/3500の出現で、スイバルが廉価機にまで格落ちした。


さて、実際持ちだしてみる。

あべのハルカスをワイド端・テレ端で撮り比べ。
38-152mm F2.6-5.1という4倍ズームレンズ搭載で、当時大体の機種は3倍ズームまでだったところ、かなり望遠らしい長さのレンズを持つ。
3倍ズームで114mmだとしょせん中望遠で、遠方のものを引きつけるには足りないことが多いけど、152mmあればかなり違う感じ。
写りも隅々まで上々。周辺光量落ちも少ない。上の広角端はF6まで絞っているが、ほぼないに等しい。
歪曲収差はワイド端で多少あるけど、それでも壁に正対してやや目立つていどのもの。

さすがにハイエンドだっただけにしっかりしてるなー、というところではあるが、しかし惜しむらくは152mmでF5.1という暗さ。
スイバル機の場合、本体に対して縦にレンズが配置されるから、奥行きは長く取れるけど口径はボディ厚みに制限される。
オリンパスC-3040Zが35-105mm F1.8-2.6、キヤノンPowerShot G1がF2.0-2.5という素晴らしい大口径レンズを積んで、半年も前に出ていたのと比べると、どうにも暗い。

それから、スイバル機は沈胴式と違ってレンズの繰り出しがないから起動が早い……と期待したらそうでもなくて、だいぶレンズ待ちで起動が襲い。5秒とか待たされる。
どうも電源OFF時にテレ端に近い位置に動かしてしまうらしく、起動時にはいちいちズーミングしてワイド端に戻している。その位置でないと振動に弱いとか、なにかあるのかもだけど。
起動時のズーム位置を設定でき、テレ端にしておけば早くなるのだけど、毎回テレ端で起動するようなカメラいやだよ。(と思ったら、先々代のE950はテレ端起動だったらしい)


まあ、同時期の他社製品を見ても、2001年当時ならまだ、結構カメラの動作が鈍重でも許される感じはあるのだけど、それにしても遅い部類に思う。
撮影するたびに書き込み待ちが数秒続き、一応バッファがあるから2連続くらいの撮影はできるけど、書き込み中は次の撮影以外の操作はできない。露出の変更とか感度の変更もダメ。
2002年には、かなり高速動作するカメラが増えてくるから、2001年にこれを買って2002年を迎えたら、いろいろつらいなあ……


とまあ、いきなりボロクソにいってはいるけれど、やはりスイバルはいい。
こういう見上げるような写真が、実に楽な姿勢で撮れる。腕上げなくてよい。

ただまあ、液晶がかなり残念で、ちょっとでも上下に視野が外れると、明度が激しく変わる。
スイバルだから正面向けたらいいだけではあるんだけど、この液晶でスイバルじゃなかったらと思うと。多分三洋系の低温ポリシリコン液晶で、暗くて見えないとか、そういうことはないんだけど。

スイバル機なのに光学ファインダーもついている、という愉快な造りだけど、スイバルで光学ファインダー使ってもスイバルのメリット消え去るだけなような。


縦位置撮影がやりにくいのもスイバルの宿命か。ちょっと水平出てないね。
縦位置にすると、液晶の上下視野角の狭さもまたモロに出て、画面見づらいったら。


ただこのカメラ、すごく寄れる。
この花はせいぜい5ミリくらいのごく小さな花。1/1.8型の大型センサーとはいえ、コンパクトでこれだけボケるほど寄れる。
ズーム中域で最短2cm。多分APS-Cのデジタル一眼で50mmマクロを使うくらいの長さと思う。
使いやすくはないけどMFもあり、現在合焦している距離も表示してくれる。
ワイド端で寄る機種だと、意外と撮影倍率が高くなかったり、カメラ自体が影になって撮りにくかったりもするけど、中望遠域で寄れるE995にはその心配もない。(といいつつこの写真は順光すぎてカメラの影できてるけど)
その代わり、またレンズの暗さが出てしまって、せいぜいF4程度。ワイド端F2.8のカメラよりシャッタースピードは2倍で、手ブレ・被写体ブレが厳しい。


ラクウショウという木の根元に、ぼこぼこと根っこがいくつも突出していた。
呼吸根というものだそうで、よく湿地に生える木だから、空気を取り込めるように根の一部を土から表に出すとのこと。

地面すれすれ撮影がすごく楽なのはスイバルのいいところ。
植物撮るなら向いてるカメラかもしれないな。

秋深し。

意外に逆光に弱いレンズで、手でハレ切りしてもまだ右上にフレアが残った。


補色CCDなので、光の取り入れ量が多い。
このカットだとAEそのままよりマイナス補正が正しいけど、それでもちょっと白飛びし易い傾向はあるかも。

ちなみに露出補正は、シャッターボタン近くの露出補正ボタンを押しつつダイヤルを回すだけ。
フィルムカメラライクなダイヤル操作系が、ニコンらしくカメラ愛好家向けのつくり。
撮影モード(P/A/S/M)切り替えも、ISO感度も、ボタン+ダイヤルですぐ操作できる。ホワイトバランスはできない。
ただその、左に回してプラス補正、ってのは逆だと思うのだが、これは私が普段PENTAXユーザーだからだろうか。ニコンは左がプラスなの?
ISO感度も、左から順に100/200/400/800/AUTOと並んでいるから、特に感度を上げたいときは左に回し、しかもいきなり高感度側から出てくる。なんで……?

同じ被写体で、焦点距離は17.4mm(換算83mm)、開放F4.6と絞り込んでF10.4の比較。
ボケ方は結構違う。開放だと手前の紫の花の手前に出てる房がボケちゃってるけど、絞ればボケない。
ちゃんとコントロールできるのがいいね。

ただ、ちょっと日陰というだけでも、感度上げて開放で、としないとシャッタースピードが取れずにブレる。辛い。
これは日陰の屋外で11月末の午後3時、ISO400にして開放F3.7、1/48.7秒。ブレるすれすれ。
ニコンおなじみのベストショットセレクター(連写してぶれてないのを選んでくれる機能)があるから、それに頼ってもいいかも。

ベゴニアが下を向けてもさっと花を咲かせていたので、

逆さ撮りにチャレンジ。
スイバルなので全く無理なく逆さ撮りができる。

もちろん、こんなうすらでかいカメラで犯罪的逆さ撮りをやったら、すみやかに警察に体ごと回収されること請け合い。


ここから突然場所を写して、泉佐野市や熊取町へ。

熊野古道の九十九王子のひとつ、佐野王子跡。
かつては王子神社があったらしいのだけど、どこかに合祀されちゃってるらしい。説明看板が昭和59年のもので、ペンキがかすれて読めない。多分ここらだと春日神社だと思うが。


熊取町へと移動して、熊取交流センター煉瓦館へ。

大阪南部の泉州地方は、江戸時代から綿花栽培が盛んだったところで、明治大正にかけて機械織りの綿布工場が次々できていった。
ここは昭和初期に建てられた中林綿布の工場を再利用している施設。
近代化産業遺産・西日本綿産業のひとつとして指定されてもいる。

左手奥がかつてのボイラー室で、今は事務所に使われている。
右手は工場だったが、今は会議室やら集会所やら、展示やらに内装を作り替えてある。

曇り空だとホワイトバランスが青く転ぶカメラだなあ。

中に入ってみると、設立当初(1907年)のものではない気もするが、織機が展示されている。

だんじりもある。
近くの小垣内(難読地名で、おがいと、と読む)のもので、1880年から2009年まで使われていたという相当に古いもの。

だんじりというと岸和田だんじり祭が有名なのだが、岸和田以外でもだんじりをやっているところは多い。
熊取町の場合、歴史を紐解けば、かつて岸和田藩の領地になっていた時期もあり、かなり早いうちからやっていたようだ。
史料に残るものでは、1805年に作られただんじりがあるとのこと。
また、今のだんじりはみんな車輪がついたものを引いているけど、熊取町の一部では神輿のように担ぐタイプもあった。

また、今初めて知ったのだけど、1829年に、あまりに派手になりすぎただんじり祭にたいして、岸和田藩が祭りにだんじりを出すことを禁じたことがあったそうだ。
これは何年続いたんだろう。だんじりの葬り去られた闇の歴史やでぇ……

展示ホールなどの向こうには中庭がある。
工場敷地の大部分は、赤レンガの外壁を残してすっかり改装してしまっているようだ。中庭もレンガ壁の内側。

なんの機械かなこれ。

かつて使われていたランカシャボイラー。
といっても、中央部分は抜いて、中を見れるようにしたもの。本体を抜いて蓋を残してるような気もするが……

ランカシャボイラーは、名前通りにイギリスのランカシャ地方でよく見られた形式。造りが簡単で操作もメンテも楽だけど、熱効率が悪い(つまり動力じゃなく排熱になっちゃう割合が多いんだと思う)から大掛かりなレンガ組が必要、とのこと。
綿布を織るには、湿度を80%くらいとサウナみたいな状態にしないと糸が切れやすいそうで、ボイラーからでた蒸気を工場内にどんどん送り込んでいたそうな。
女工哀史というと、紡績工場でじん肺になってしまうのをよく聞くけれど、ここの女工さんはもしかすると湿度のお陰でじん肺はまぬがれたかもしれないが、その代わり恐ろしく不快な環境での労働を強いられてたんだろうなあ……などと空想したり。

売店があったので、熊取名物「どっち餅」をひとつ。160円。
スポンジケーキを二つ折りにした間に、つぶあんと、結構大きい餅をはさみこんだお菓子。
餅といっても求肥なので、暖めなくても柔らかい。求肥なので少し甘味もあり、さらにつぶあんが入るのだけど、あまりくどい甘さのあんこではないみたいで、なかなかバランスいい。

他にも、地元繊維製品などの販売もあり。
売店の隣には、フランス料理屋なんて入っている。

工場の電信室。
入り口は塞いでしまっているようで、中は見られない。
レンガがオランダ積みになっているのがポイントだ。

こっちは旧事務所棟。
レンガ造りではないだけに再建したものだけど、当時のものを解体してできるだけ再利用して再建したとのこと。


さて、煉瓦館の隣には、かつての熊取谷一帯の大庄屋だった中家の住宅がある。


外見は少し手直しされているが、中はかなり昔のまま。
庭も広く残されたままで、庭木などもちゃんと手入れされている。

入ってすぐは広い土間だが、堺あたりの商家とは違う作り。商いをする雰囲気じゃないな。

ふすまにぎっしり桐の紋。

部屋から庭を見てすぐの植木に、橋本宗吉電気実験の地、という碑がある。

江戸時代の蘭学者・橋本宗吉が、雷が電気であることを確かめたベンジャミン・フランクリンの実験を追試するにあたって、中家の協力を得てここで行ったそう。
しかしあの実験、フランクリン自身はよほど慎重に安全確保してやったらしいけど、下手なやり方で真似しようとして感電死した人が出たそうな。
橋本宗吉は幸いにも実験では無事だったのだけど、その後、大塩平八郎の乱に弟子が関与してたから巻き添えくったり、蘭学者迫害に遭ったりと、楽には生きられなかったようだ。

また、有名な老舗の蕎麦屋に「更科」「藪」「砂場」があるが、その「砂場」は、中家ゆかりの人が始めた蕎麦屋だそうな。
江戸中期の「摂津名所図会」に、「砂場いづみや」が挿絵入りで、熊取谷の中家の者が開いた名店だと紹介されている。
今の大阪市西区新町あたりにあったそうで、新町南公園に「ここに砂場ありき」という碑があるらしい。一度見に行ってみようか。

床の間とかにさり気なく飾られた花生けや花が侘び寂び。
ISO800はかなりのノイズだなあ。でも2001年当時だと、ISO800を選択出来るだけでも珍しいだろう。

廊下なしに部屋が繋がるのは当時だからあたりまえだけど、ここは千鳥に部屋が並んでるな……

うわ、パタパタ時計つきラジオ。National RC-685。1975年の製品らしい。

 遥かに古そうな電気スタンド。

舶来のフェルト帽の箱。

AICHI TOKEIかな。
多分今の愛知時計電機だと思う。みのもんたが2位株主の。

祖神社もある。

中家はここらではとびきりの名家で、後白河院が熊野詣にきた際に立ち寄って行宮としたこともあるとか。大層なもんだなあ。
煉瓦館と合わせて、なかなか興味深いスポットだった。



COOLPIX 995だが、うーん、これをC-3040Zと直接比較すると、見劣りするとは言わざるをえないか。
遅い起動、遅い書き込み、遅いズーミング、暗いレンズ、どうも基礎体力が足りないというかなんというか。
起動時ズーム位置を選べる、ISO800が使えてかつメニューに入らず素早く変更できる、ベストショットセレクターがある、と、真面目な造りで問題を軽減しようとしているのはわかるけれど。

まあ、今になって使うとなれば、スマートメディアなんか必要なC-3040Zより、2GBのコンパクトフラッシュを平然と使えるのが大きなアドバンテージにはなるが。

 操作性はいいから使ってて不快とまではいかないけども、スナップ写真に向くようなもんじゃないな。
でっかくて変な形だから、カバンに入れるしかなくて、取り出しが手間。レンズキャップも手で付け外し。
それで起動に待たされ、やっと撮ってもまた仕舞うのに手間。ううん。
 晴れてればいいけど曇るとてきめんに転ぶAWBと、そしてWBはメニューからの変更なのも惜しい。何かファンクションに設定できたような気もするけれど。

特にスイバルが使いやすい撮影シーンもあるし、至って強力なマクロも魅力のひとつではあるから、特殊なシーン、例えば花ばっかり狙いたい日とか、そういうのなら大活躍しそうではある。スイバルとマクロは相性いいとは思う。
そうでなけりゃ、いつも使っていたいってカメラじゃないなぁ。

小型スイバルで動作が早くてマクロに強い、ってな機種があれば、サブカメラとして常時持っていられそうなんだけどな。
京セラFinecam SL300Rは、小型と速さは合格点だけど、マクロに悲しいほど弱い。20cmとか。
逆にマクロに強いCOOLPIX 995は、でかくて遅い。

COOLPIX 3500はもう試したけどあれも遅い。そして予想の3倍くらい外装がチープでかっこわるい。
サイバーショットU50か、COOLPIX SQ以降のやつか、その辺を試してみたいんだけど……


E990と似たような機種に見えるが、結構違う。
E995はEN-EL1なんて今更他に使うところ少ない電池だが、E990は単三電池4本。
E995が38-152mm F2.6-5.1に対して、E990は38-116mm F2.8-4。
また、ストロボの位置が変わっていて、E995は上部にポップアップ、E990はレンズ横に直付け。
それによってE995は幅が短くなったが、レンズ部が厚ぼったくなった。
動作がのろくさいとか、そういうとこは同じらしい。改善なし。