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2014年12月4日木曜日

トリクルダウンあそび

最近トリクルダウンという言葉をよく聞きます。
経済は学んだことがないので詳細はよくわからんのですが、要は富裕層が豊かになればそれによる経済の動きが生まれてどんどん下層にも富が流れ落ちる、というような話だそうで。
twitterで、上に注いだらあふれた分が下段にこぼれていくシャンパンタワーのイラストがよく流れていました。(いくつかバリエーションがあったので、特にどれかへのリンクはなし)

全然関係ないんですが、家電好きの私にはトリクルチャージのほうがよほど馴染みのある言葉なもんで、この記事のネタを確認しようと検索したら、リチウムイオン電池の話ばっかり出てくる。
それまで間違いに気付かなかったもんで、友人相手にトリクルチャージって話してたかも。




ところで、Androidアプリを渉猟してたら、砂ゲーという秀逸なアプリがありました。
手描きで地形を描いて、そこに砂や水を流し込む、という、目標も成功失敗もないようなものなんですが、これがなかなか楽しい。やってるとZenのような気分になれる。
PC用のフラッシュアプリもありますが、Android版のほうがちょっと高機能。


はい、そういうわけで、「砂ゲー」でもって、トリクルダウンをやってみました。

一番上の白いのが「くも」で、自然に青い「みず」がどんどん発生して落ちてきます。
器はグレーの「てつのかべ」で5段にしました。全部手描きなのでいびつですが、まあ、見るからに違うだろ、というほどのものではないことにしてください。なに、実際の社会はもっといびつです。
私がいるような社会の底辺として、すべての器の一番下に、緑の「しょくぶつ」で床を作りました。水が落ちてくると成長するようになってます。

さあ、どんどんトリクルダウンしてもらいます。

一番上の器はすぐに溢れます。
 
どんどんトリクルダウンしていきますが、器の形の微妙な差や、器の場所によってペースがずれていきます。
特に3段目右側の器、別に器が大きいわけでもなく、2段目の右の器の右端が高いわけでもないのに、ずいぶん遅くなりました。
微妙な条件の違いで、ずいぶん差がついてしまうようです。

「砂ゲー」の水は粘度が高いので、器の左右端の高さが多少異なっても、高い側にも少し流れ出ます。
粘度が低かったら、本当に低い側にしか流れ出ないことになります。
経済の動きに例えるんなら、ある程度粘度が高い方がリアルに近いかな?

さて、いよいよ我々最下層にもおこぼれが落ち始めました。
まあ、こういうピラミッド型だと、真ん中近くにたくさん落ちるのは当然といえます。
しかし、先ほど流れが悪かった3段目右端、ここが流れをせき止めてしまい、右端近くの下段へまったく流れ込んでいません。
3段目右端の器は、右端がちょっと高くなっているので、その下にはいよいよ何も来ません。
左端にはまだしも流れていっていることと見比べると、「元々生まれた場所が悪かった」「上にいる奴が悪かった」という運の悪い人には、トリクルダウンの恩恵はこないようです。

また、これは器の大きさを同じくらいに揃えていますが、リアルな経済だと上に行くほど器が大きいように思います。
上の方って都市銀行とかトヨタ・パナソニックといった超大企業でしょうから、最下段を中小企業正社員クラスとしても、数千数万倍の差はあるでしょう。
上の方の器が現状どれくらい満たされているかによりますが、器の大きさを同じとするより、下への流れ出しは遅くなるでしょうね。
 
さて、トリクルダウンの恩恵を受けた最下層が、すくすく伸び始めます。
特に真ん中あたりのがどんどん急成長していきます。
この急成長する「しょくぶつ」の株、せっかくなので田中という愛称をつけましょう。

「しょくぶつ」は水に触れると伸びる、つまり器に到達すると一気に侵食します。
田中が地元権力に食いついたぞ……!

下に行くほど器が満ちるのが遅かったわけですが、ひとたび最下層から食い込んだ田中は、その遅さを逆回しにするかのように、すごい勢いで下克上していきます。上に行くほどより多くのみずを我が物にできるので、加速度的に伸びます。
また、田中が侵食してしょくぶつ化してしまった器は、落ちてきた水をすべて自らの成長に回してしまうため、下層へのおこぼれを回さなくなります。
「器をあふれたものは下々の者に与える」というノブレス・オブリージュをもった上流階級であればいいのですが、田中にそんなものはありません。ただただ独占して私腹を肥やします。
それによって、田中に次いで伸びていたしょくぶつ株の成長は遅くなり、やがて止まります。

ところで、日本ってあまり寄付をしない社会だそうですね。ひとりあたりでアメリカの十分の一とか。

田中、ついに位人臣を極める。

最下段の器に食らいつこうとするところまで伸びた二番手株ですが、上流を田中に牛耳られた結果、ここが限界でした。最早みずは落ちてこず、成長も止まりました。

そして田中はすべてを我が物とし、すべての変化は停止しました。
こうなったらもう革命を起して田中からすべての富を没収、すべての資本を国有化して富を労働者に等分配し、理想社会を築くしかありませんね。


結論としまして、このモデルでは、運の悪いやつ(上流に運の悪いやつがいた人も含む)には少しだけしか、あるいは全くこぼれおちません。

また、下に行くほど、恩恵がくるのが遅くなります。
そして、田中の伸長によって上流を抑えられた他のしょくぶつ株を見てもわかるとおり、上が止まると下も急に止まります。上の方で止まれば、そのストップが下に伝わるのはすぐです。
特に、上層が田中に制圧された場合が最悪で、ほんとに何も落ちてこなくなります。あくどい奴が過剰に伸びるのは抑えなければなりません。

みずの粘度が高ければ高いほど、器のふちより高く盛り上がる量が増えるので、供給停止後もこぼれ落ち続ける量は多くなります。どれくらいの粘度と設定するのが正しいかはわかりませんが、経済だったらかなり粘度は高いものと考えてもいいような気はします。
とはいえ人間の心理として、上からこぼれおちてきたものはできるだけ抱え込もうとするだろうし、おちてこなくなったら、少々キャパオーバーしていても頑張って抱え込んでこぼさなくするようにも思いますが。


なおこの記事の本当の目的は、トリクルダウンを解説するシャンパンタワーのイラストがどれも、綺麗に同じ形の器が整然と並んでいる図になっていることへの、反論というか、ケチつけです。
そんなきれいなわけないやん、と、器をあえてフリーハンドで適当に描いてやってみたのがこれです。で、やっぱりフリーハンドだと、トリクルダウンもいびつに偏りました。
私は、いびつで偏るほうがリアルだと思います。

選挙期間中でアベノミクスへの賛否が問われている今ですが、この記事がアベノミクス批判かどうかは、「そもそもアベノミクス=トリクルダウン理論に基づいたものなのか」とか、「そもそもシャンパンタワー型の図がトリクルダウンのモデルとして適当なのか」とか、いろいろ判断することがあります。