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2014年8月3日日曜日

映画「革命の子供たち」

見てきました。公式サイトはこちら

かの日本赤軍の重信房子と、ドイツ赤軍の前身であるバーダー・マインホフ・グルッペのウルリケ・マインホフという、東西二人の女性革命家(あるいはテロリスト)の、それぞれの娘を中心に、当時の革命運動関係者へのインタビューを映画にした作品。



ちなみに、よくある間違いで、総括といってリンチ殺人を繰り返し、あさま山荘事件を起こしたのは連合赤軍で、日本赤軍は異なる。
どちらも母体は赤軍派という組織だけど、そこから運動を世界に広めるべくアラブに渡って、パレスチナ解放人民戦線と協力して反イスラエル活動をしていたのが日本赤軍。
日本に残った赤軍派が幹部の逮捕などで弱体化し、京浜安保共闘という組織と連合してできたのが連合赤軍。


なんというか、70年代に繰り広げられた新左翼の革命運動についての基礎知識がないと、ひたすら訳の分からない話を聞かせられ続けるだけの映画。
当時のデモやニュースの映像が交えられつつ、ひたすらインタビューが続く。再現ドラマとかそんなもんはない。ストーリーもない。説明もあまりない。

私は学生運動には興味があるので、多少は予備知識はある。でなきゃこの映画観に行かないけれど。
興味があるっていっても、別に憧れはしないし、あの時代に生きていても参加しなかった気もする。まあよくいっても、やる前に理論に走って何が正しいか迷って行動しない口だけ小市民になると思う。小心者だしね。

後知恵で21世紀の視点から見ていると、少なくとも中核・革マルの内ゲバ殺人や連合赤軍の総括なんかは、どれほど崇高な理想のためだと理由があるとしても、肯定できる線を完全に超えている。
しかし、運動がかなり世間に受け入れられていたらしい時代もあったり、少なくとも私なんかよりよほど頭も良ければ理想も高い人たちが大勢活動していたこともわかるし、それがなぜあんな方向に向かっちゃったか、など、知る価値のあることは数多くあるようにも思う。

そんなわけなので、私にとっては意味不明ということはなかった。
しかし、理解できていたかというと、やっぱり難しい。
後知恵ではどうにもならないところが多い。映画の中にもジグザグデモやら、マスクとヘルメットのゲバスタイルでの大行進やら、当時の映像は差し込まれるけど、それを見ただけで当時の空気がわかるわけではない。
学べることは多い映画だけど、そもそも学んだだけでどこまでたどり着けるかは未だよくわからないね。第二次大戦よりも最近のことだというのに。

もちろんこういう映画の常で、かつての革命運動を全肯定するか全否定するという答えを、観客に与えてくれるものではない。
重信メイが母にもその運動にも好意的なのに対して、ウルリケ・マインホフの娘であるベティーナ・ロールはかなり否定的な口ぶり。

日本赤軍については、好意的に語る人のインタビューが多かった。
連合赤軍や内ゲバのような迷走じゃなくて、アラブの人々のために活動するという目的はブレてなかったのかな、とは思えてくる。
とはいえ、おそらく日本赤軍最大の汚点であろうテルアビブ空港乱射事件を「あれは軍と交戦した中で巻き添えが出てしまったものを、検証もなくすべてテロリストによる虐殺ということにされた」とい語るのは、なかなか今の日本人である私には受け入れにくい。もうちょっと他の意見もほしい。これは確か重信房子の弁護士である大谷恭子氏の話だったかな。
あれ以外では日本赤軍は民間人に死傷者を出していないとの話で、確かに確認してみると、何度も行われたハイジャック事件ではいつも人質は解放している(死傷者なしではなさそうではあるが)。
重信房子の罪状も、殺人未遂であって殺人ではない。

一方、ドイツ赤軍には手厳しい。
何より主に語る娘ベティーナが手厳しい。ドイツ赤軍には「麻薬中毒者のような連中」といってしまう。テロリストの娘として送った少女時代もかなり酷い思い出として語っていたし、「母を英雄扱いする若い人の手紙がよく来る。親と違ってお前は、みたいなことも書かれる」とうんざりしていたりも。
当時の映像として、ウルリケ・マインホフ自殺後にあった「彼女は(政府の弾圧によって)殺された」と横断幕を掲げたデモの映像が入ったりもするから、世間的には支持する声もあったらしいが、娘のベティーナはさっぱり支持していないようだ。
重信メイとベティーナのパーソナリティの違いかもしれないし、日本赤軍とドイツ赤軍の違いかもしれない。
ドイツ赤軍は日本赤軍と違って、爆弾テロとか死者が出ることを辞さない手口も使っていたらしいから、そこからも違いがあるのかもしれない。


客席を見ると、30代なかばの私がもう抜群に一番若く、他の観客はみな学生運動世代の人たちばかり。
革命にシンパシーを持ってたのか、中核派や革マル派だったか、それとも逆に右派だったか、何だったにせよ、あの時代を生きてきた人たちだろう。

リアルタイムに出来事を見てきていれば、多くの新鮮な情報に触れて、日本赤軍に対しても何らかの判断も付けてきただろうし、それで今回この映画を見て、その判断を改めるなり改めないなり、影響されることができる。
私には未だ、判断をつける段階にも至れない。
まだまだ日本赤軍も、革命運動も、よくわかっていない。
いつか判断できる時がくるのなら、この映画でそれに一歩近づきはしただろうけど、まだまだ当分先なんだろうな。