前々から探していた、カシオEXILIM EX-S100がやっとこ手に入った。
駅メモで水間鉄道を埋めてないので、沿線をぶらぶら歩きつつ駅にチェックインしていこうと。
EX-S100、スペックシートなどではさっぱり見えてこないのだけど、実はものすごい力の入れどころの偏った、変態といっていいようなカメラなのである。
南海貝塚駅を下りて、水間鉄道乗り口へ。
レトロな発券機があるけど、これでもPiTaPaカードに対応した。
だが乗らずに、駅東口に出ちゃう。すると観光案内所が。
知名度が欠片ほどもないのだが、貝塚市には「つげさん」というゆるキャラがいる。
貝塚市は、あまり知られてないけど柘植の櫛が特産品で、それにちなんだキャラである。
で、観光案内所の中でその柘植の櫛を売っていた。初めて売ってるの見たよ……。意外と値段は高くないので、土産物にはいいかも。
ところで、貝塚市の貝塚駅近くの地名は海塚という。
そしてカイヅカと読ませると思わせてウミヅカ。
両国国技館近くの地名が横網町、というほどではないが、なかなかトリッキー地名といっていいと思う。
観光地図をいただいて、線路沿いをどんどん南東へ歩いて行く。
あまり道端にいろいろあるところではないが。
貝塚市役所前駅。バス停のようなネーミングだが。
ここから南へちょっと行くと市役所があり、そのへんに郷土資料室があるようなことを書いていたのだが、土曜日に市役所開いてないだろうとスルー。
しかし、後から見れば土日もやってる図書館内の一室だったようで、行けば開いてたな。
貝塚駅からたった800mでこの駅があるが、かつて、貝塚駅より200m水間側に海塚駅があった。
たった0.2kmの貝塚-海塚間の駅間距離は、路面電車でない鉄道としては最短クラス。現在の最短も0.2kmらしいので。
今は違うらしいけど、日本一運賃の割高な鉄道は水間線だという話も昔よく聞いたのだが、これはどうなんだろう。
路線の端から端まで対しての運賃だったのか、それとも貝塚-海塚の運賃だったのか。
近義の里駅。
貝塚市役所前から近義の里の駅間も、たった0.4km。
もっとも、0.4km駅間は他にも、清児-名越間、森-三ツ松間、三ツ松-三ケ山口間、三ケ山口-水間観音間と、水間線だけで5箇所もある。
あれ……? 運転手が見えないぞ……?
これは後ろじゃないはずだが……。
(よく見ると居ます)
この水間鉄道1000型は、元は東急7000系の中古を譲り受けたものだった。2006年から改装して水鉄1000型と改めている。
譲り受けた直後に乗ったら、つり革に入ってる広告がシアター・コクーンのままだったりして驚愕したよ。
いや、関東のことは私にはわからんのだが、シアター・コクーンは中島みゆきが夜会をやるところだから、名前くらいはわかる。
歩いてて見かけたんだけど、こんなマスク、市販してるんだろうか。
それともPTAの人にこういうの作る人がいたりしたんだろうか。やるなお父さん。
ここまで、画像を間違ってPNGで上げてたけど、次からJPEGにする。
石才駅近くで、なぜか干上がった農業用ため池があった。和泉国の、特に南の方は昔から少雨で、農業用の溜池がそこらじゅうにある。
この近くに町会館が建てられていたが、この溜池の一部を売り払い、その金で町会館を建てた、という旨の石碑が立っていた。
石才(いしざい)駅。しかし「いっさい」と呼ばれることも多い。
一応、このあたりの幹線道路のひとつである、府道30号線沿いにある。まあ幹線つっても2車線だけど。
府道30号線は、なぜか土地の人には「13号線」と呼ばれている謎がある。ThirteenとThirtyを間違えるのは日本人ならよくあると思うが、日本語で間違えるのは不思議だ。
石才駅近くに、自動車教習所あり。
大型二輪免許取得を目論んでいるので、ちょっと料金などの案内を受けてきた。
いやねー、中型二輪取った教習所、事務方の職員の態度が恐ろしく悪くてねー……。大型取るのは別のところだな、って。
教官や営業さんはみんなまともだったから、ことさら悪評流そうとはしないけれど……。 おっと脱線にも程が。
清児駅。
かなり古い集落のど真ん中に駅が置かれたようで、車が通るのも難しいような細く曲がった路地に民家が密集するところにあった。青い柵の通路が伸びてるのも、多分設置の都合なんだろうなあ。
町や集落を線路が通ることを嫌って、やたら離れたところに駅があるケースもよくあるけど、これはあまりにもど真ん中すぎたのかも。
しかしこれだけ密集しているのに、ここから線路を分岐して犬鳴山で和泉山脈を越えて和歌山に延伸する計画があった。やれんのか。
名越(なごせ)駅。
ちょっと遠くがボケてるのだけど、EX-S100はシャッターボタンを一気押しすると、ピントを合わせずパンフォーカス撮影してくれる仕様。多分それのせい。
この駅、地図で見るといかにも南側に出入口がありそうなのだけど、南側の道路は駅を間近に臨む行き止まり。
入り口は東の、線路と道路が交差するところにある。そして例によって長く延びる通路。
こっちが若干ピントが甘い感じなのは、多分テレ端だと甘くなるんだと思う。
ひろちゃん、と書かれたヘッドマークをつけているが、今は水鉄がオリジナルヘッドマーク掲示を受け付けてくれるので、それだろう。
清児駅出入口があるところの道を、南へ道なりに歩いて行くと、森稲荷神社というところがあった。
元々はここから東の山の頂にあった、「木島谷の総社」と呼ばれていた神社だそう。
具体的にどの山かまではわからないが、確かに東側は山地だ。
というか西側も山地で、水間鉄道に沿って谷になってるようだから、この辺りが元々は木島谷なんだろう。
中盛彬の「架利素米農比登理棋止(かりそめのひとりごと)」という江戸時代後期の本に、「天正の時代には近所だけでなく摂河泉から大勢の参詣者があった」という記述がある。
中盛彬は、ナカモリ・アキラではなくてナカ・モリシゲというひとで、現在の熊取町にあたる熊取谷の庄屋で、泉州地域の地誌として「かりそめのひとりごと」を書いた。一種の知識人。
先月行った熊取町の中家住宅が、中盛彬の家。
境内にある不動堂。不動堂については以下を参照。
EX-S100には、ベストショットセレクターの中に、ホワイトボードモードというのがある。
これを使うと、ホワイトボードやあるいは看板などのようなものを撮影するとき、斜めから撮影して台形に歪んでしまうのを補正して、正面から撮ったように修正してくれる。
ホワイトボードの縁をエッジ検出してエリアを拾い、それを台形補正する感じ。
エッジ検出がなかなか万全とはいえず、上手く拾えないことも多かった。複数検出した場合は、補正を行う前に手動選択できるのだが、関係ないところばっか複数拾うことも多々。
それから、レンズの歪曲収差が大きくて、広角端だとかなり樽型歪みがあるので、きれいに補正しきれないというのもあるが、まあ仕方ないか。
森駅。
三ツ松駅。
三ケ山口駅。ミケヤマグチとミカヤマグチと、読みが錯綜している。私もどっちかわからん。
水鉄はあまり駅の造りも変化がないな……
さて、三ヶ山口駅からちょい北へ行くと、貝塚の誇る天文台・善兵衛ランドがある。
大阪府にある望遠鏡としては最大級の60cm。
しかも、常時一般開放されており、週に三日は夜までやっている。
善兵衛ランドは、大学や研究施設が関与しない、純然たる一般人向けの施設で、入場も無料。
竹下がばらまいたふるさと創生資金の1億円を活用して、自己資金を追加して建てたもの。
今日はもう年の暮れということもあり、昼13時頃だが客は私が最初だったそう。
ひまだったこともあってか、わざわざ天文台を開けて太陽の黒点観察をさせてくれたり、「善兵衛ランド」というネーミングの由来である岩橋善兵衛についての展示にも詳しい解説を付けてもらえた。
岩橋善兵衛は、江戸時代中期の1756年生まれ、貝塚市の海手にあった魚屋の次男だが、学究肌の人だった。
次男なので家を継げないから、メガネ用のレンズを磨く職人になった。
それでレンズを色々自作できるため、西洋で作られているものを参考にしつつ、屈折望遠鏡を作り上げた。
これが舶来品に劣らぬ性能を持つと評判になり、かなり多数製造された上、諸大名に献上されたりもしたし、このために岸和田藩の岡部氏から苗字帯刀を許されたりもした。
その中の一つが今では国宝になっているのだが、それは伊能忠敬が日本地図を作るときに使用したもの。
伊能忠敬があれだけ正確な地図を作るにあたって、天体観測による測量を行っていたので、高性能な望遠鏡が欠かせなかった。
本人も天体観測を行っていて、他の天体と異なる動きをする惑星の存在に気付いて、それを自作の望遠鏡で眺めて、土星に輪があることや木星に縞模様があることまで発見して、本に書き残している。
また、惑星の軌道を詳しく記録し、天動説を発見する、とまではいかなかったが、「水星・金星が太陽の周りをまわり、月と火星・木星・土星は地球の周りを回っている」というところまで考えだしている。
ティコ・ブラーエの修正天動説と同レベルのところまでたどり着いたことになる。
(まあ、ベンジャミン・フランクリンが1752年にアメリカで行った実験が、すぐ近くの熊取谷で1820年代くらいに追試されていることを考えると、岩橋善兵衛も1600年頃のティコ・ブラーエやヨハネス・ケプラーの学説を多少なりとも知っていたかもしれないけれど)
ともあれ、およそ優秀な人材を輩出しない泉州という土地では非常に珍しい、優れたエンジニアにして学者である人物だった。
貝塚市でだけは知られている人物だったのだが、時代が進むにつれて知らない人も増えてきてしまったため、それを顕彰する意味もこめて、公共天文台としてこの善兵衛ランドを作った。
今でも無料で公開しているのも、貝塚市の意気だとのこと。余裕ある自治体じゃないはずだけど。
竹下の一億円、くだらなく空費したところも結構あったもんだけど、貝塚市はまったくよく使ったもんだと思う。
ところで善兵衛ランドで知った、すぐドヤ顔できる豆知識。
よく織田信長が、献上された望遠鏡を覗いているシーンがマンガやドラマで描かれてるけれど、ガリレオ・ガリレイが望遠鏡を作って空を見たのが1609年だから、本能寺の変よりずいぶん後。
善兵衛ランド屋上から玄関先を見ると、何か書いてある。
手前に立っている街灯が日時計になっており、先端の丸い影が落ちる位置の季節による違いを明示してある。
一番近い線が夏至、一番遠い線が冬至で、かなり太陽の高度が違うのがわかりやすい。
善兵衛ランドを満喫して、水間観音駅へ。
静態保存の水間鉄道501型電車だ。
Wikipediaに載ってる写真とはまったく塗装が違うが、塗り替えたようだ。
えらいデザインの水間観音駅。
わりと最近まで水間駅だったもんで、未だに違和感あるな。
駐輪場のトタン屋根がちょっと邪魔で寂しいね。
ちなみに中は物置状態になっていた。惜しい。
東急から譲られた7000系が、1000型に改修されずに残っているのもある。
2007年までは走っていたそうだけど、今後使うのかな……
これで今日のウォーキングは終了。
EX-S100は、というと。
後に、1000万画素以上で世界最小という座を一時期だけ得ていた(Nikon Coolpix S01が出て陥落)、コダックeasyshare miniとくらべても、高さ・幅とも半周り大きい程度。
最近の水準で「小さめ」といわれるであろう、PENTAX Optio RS1000とくらべても、高さが同じで幅が少し小さい。
そしてどちらと比べても、厚さは薄い。
これが2004年のものなんだから、かなり驚異的サイズだろうと思われる。特に、ズームレンズ搭載でこの薄さはすごい。
しかしこの驚異的サイズにズームレンズを押し込むために、かなり失ったものは大きい。
換算36-102mmの2.8倍ズームで、F4.0-6.6と、めちゃくちゃ暗い。
36mmF4.0で、しかも基本感度がISO50なもんだから、昼間の日陰くらいでも油断するとブレる。室内にくると、ISO200までオート増感されても1/8秒と出てしまう。
操作性はさすがの優秀さで、十字キー左右に好きな機能を割り当てられるのだけど、最初は露出補正を割り当てた。
しかしあまりの低照度への弱さのせいで、露出補正を諦めてISO感度に変えた。ISO400でも足りないことが多いくらい。
センサーも、1/3.2型300万画素CCDと目いっぱい小さい。だからダイナミックレンジが狭くて、かなり白飛び・黒つぶれが厳しい。
だから露出補正を積極的に行いたいが、感度も変えまくらないと撮ってられない面もあるから、十字キー左右をどっちにするか悩ましい。
基本感度がISO50と低いのも、オート感度だと、たとえ暗闇であろうがなんだろうがISO200までしか上げないのも、小さいセンサーのノイズの多さを嫌っているんだと思う。
バッテリーは、これまでの単焦点EXILIMカードと同じNP-20だから、サイズも容量も小さい。
サイズの割には頑張る感じで、73枚撮影しても電池残量はフル表示のままではあるけども、今回はフラッシュはまったく使っていない。
この暗いレンズでは、フラッシュを使わざるを得ないケースも多くなる。
そしてレンズが暗ければ暗いほど、フラッシュは強力なものが必要になる。
強力だと電池が減る。
そしてレンズの描写も、やっぱりかなり辛い。
広角端は、かなり酷い歪曲収差と、四隅のボケや色分離がある。
望遠側は、全体的にもやがかかったような甘い描写。
この薄く小さいカメラを実現するために、ものすごいしわ寄せが来てる感じ。
光学部ばかりは、小さければ小さいほど辛くなるからなあ……。
しかしそれでも、カシオはこれだけの小型化のために、ずいぶん力を入れている。
このために、村田製作所が開発した透過性セラミックス「ルミセラ」を使ったレンズを設計している。
なんでもこのレンズ、以前PENTAXと共同開発した、収納時にレンズ群の一部を横に逃して薄型化する、という仕組みは使っていなくて、まっすぐ収納しているそうだ。
それでボディ厚み16.7mm。驚異的だ。
この後のEXILIMシリーズに、S100と同じスペックのレンズを持った機種は見当たらないから、本当にこの機種だけのために設計されたレンズだろう。まあ、他の機種で使うほどじゃないとされた結果論かもだが。
この小ささに2型の、当時としてはかなりの大型モニターを搭載。
起動も、操作レスポンスも俊敏。
電池が小さい以上はあまりハイパワーなCPUは積めないはずで、実際撮影後の処理時間なんかはある程度長いから、パワーありそうには見えない。おそらく、細かい最適化とか作りこみでよくしてる。
撮影後の処理にやや時間がかかっても、その間に例えば電源OFF操作をしても、ちゃんと処理終了後に実行する。処理中に行われた操作をただ無視するような作りはしていない。
薄いから使いづらい、という部分が、光学系以外にはほとんどない。
唯一、電源ボタンがちょっと小さすぎて押しにくいだけ。
外装もしっかりしていて、フルメタルなのはもちろん、金属の表面処理がなかなか高級感がある。
一応カード系EXILIMのフラッグシップとして作られただけあって、このへんは確か。
ま、レンズのスペック的にかなり撮影上の問題があって、実用性はちと厳しい。
数ミリ薄いなんてことは、実用上の大差にはならんのだから、厚さ16.7mmのEX-S100よりも、25mmくらいの他のカメラのほうが使いやすい。
でも、特殊レンズを設計してまでやった結果がこれだというなら、よくぞ物理法則とそこまで戦ったといってやるしかないじゃないか。